市場と無価値になった人たち

市場がすべてに値札をつけ出してから久しい。

これからますますいろんなものに値札をつけていくのだろうと思う。

人間の名前にまで値札をつけだした市場が私は好きではない。

 

市場の原理が私に働かないようにするためにいろいろ策を講じてみた結果

私は世の中に対して本音を告げる方法を編み出した。

多分これは誰の迷惑にもならないし問題にもならないから

私はどんなことでも真実として話すことが出来るだろう。

 

あとはあなたが判断すればいいことである。

 

世界にあるもので私が唯一市場に奪われなかったものといえば

この真実を語る口と手なのだけれどとりあえず非力な私は

これらを守ることに必死で様々なものを犠牲にせざるを得なかった。

 

圧倒的に言葉の数を所有することに成功した私は

かろうじて物語を紡ぐ術を得たのでこうして語りかけてはいるのだけれど

おそらく誰も話しかけては来ないのでそれはそれで問題ないのだろうとも思う。

わたしがどこにいるのかどういう人物なのかは対して問題ではないのである。

 

世界の均衡がものすごく崩れたり乱れたりするので私はとりあえず

平穏に生きるためにただただ目立たないということに徹して生きてきた。

それでも目立ってしまうから最終的には目立つ方向性でものすごい

神経をすり減らしたりもしたのだけれどおそらく

大体は成功した。

 

そっとしてもらえる空間と言葉を手に入れたのですごく快適である。

もう誰にも邪魔をされずに言葉をつないでいくことができるのでとりあえず

いろんな方角の言葉を練習している最中である。

 

多少興味があるのであればお付き合いしていただけるとわたしは

心細くないのである。

 

よろしく頼む。