馬鹿だねといって
笑った君がこっちを向いて いつまでも笑っているものだから
僕は不貞腐れたように歩き出して
あとをついてくる君の足音だけを聞いていた
ヒールの高音部分が かたい地面に刺さっていくようだった
少し歩き疲れて 戸惑っている
雨の日に君は赤い傘を地面に転がしたまま
ひとり座っていたんだ どこにいくでもなく
ワンピースが濡れてしまうというのに
あんな所にいては風邪をひいてしまうでしょう
赤い傘が汚れてしまう 折れたヒールでもう歩けない
君をおぶったまま 雨が止むまで少し
喧噪の中を隠れられそうなところまでは
そばについていて
どうせ明日には忘れてしまう
きっと大丈夫
赤い傘が雨に濡れてしまうから